当事務所の月次決算のコメントに頻繁に出てくるのが、現金預金を増やしなさいというものです。なぜなら会社でも個人事業でも経営が行き詰ってしまうのは、赤字決算が理由ではなく、支払うべきときに支払うお金がないことが原因だからです。

 

ただし1つ注意点があります。いくら現金預金を増やすためとはいってもお金のための仕事という意識を持ってしまうと、仕事自体が面白くなくなってしまいます。結果仕事の質も低下し、誇りも持てなくなります。そうなるとお客さんや社員さんも自然と離れていってしまいます。

 

例外があるとすれば、創業間もない場合や再建途上の場合など何としても事業を存続させるために必死に取り組まなければならない時期だと思います。それを乗り切り成長路線に入ったら自社の経営理念やビジョンを明確に打ち出して、顧客本位の仕事をやり遂げた結果としてお金が残るという価値観の転換が必要です。

 

前職の税務署勤務時によくお目にかかったパターンは、創業して4~5年が経ち

事業が軌道に乗ってくると浪費をし出す経営者です。恐らく今までの大変なストレスから解放されたという安堵感が反動となって表れるのでしょう。収益獲得に直接結び付かない設備投資(高級車・別荘の購入など)や社長個人の慰労費用(飲食・趣味関連)など申告書や風評内外観調査をすれば大方察しがつきますから、税務調査の絶好のターゲットとなります。浪費癖のある経営者は大半がお金のための仕事という意識を抜け出せない方が多かったように思います。

 

事業を存続させるためには、お金のために仕事をするという事も止む得ないケースもあるかもしれませんが、消費者の目はどんどん厳しくなっています。受注が減った、お客様が減ったなどよく聞きますが、仕事が少なくなっても時間が少なくなるわけではありません。

1つ1つの仕事に手間暇を惜しまない、お客さんとの会話時間を増やす、今後の会社経営についてじっくり考えてみる、自己研鑽に時間を割くといった取組みをされたほうが、長い目でみれば良い結果に結び付いていくと思います。