先月の23日、国税庁から10年後の税務行政の姿を描いた資料が公表されました。国税庁のHPに詳しい資料が掲載されていますから、興味のある方は一読ください。要約すると、ついに国税の職場にも人工知能AIが本格的に導入される見込みです。インターネットのチャットでAIを相手に税務相談や申告手続きなどの問合せが可能になるほか、税務調査での活用も検討されているようです。調査の選定や不審項目の洗い出しなどをAIが判定できるように学習させていくようです。今までこの分野は調査官の腕の見せ所だったわけですが、将棋や囲碁の世界と同じようにいずれベテラン調査官を凌ぐ的確でスピーディーな調査展開が可能になるかもしれません。さらに研究開発が進めば、実際の調査もAIが行うことになると思います。想像するだけで恐ろしいですね。反論しようにも理詰めで攻勢をかけられ、現場での駆け引きも学習能力の蓄積により、あっという間に習得してしまうかもしれません。

 

2年前にオックスフォード大学が発表した10年後に消える職業、なくなる仕事のなかに税務行政職員が入っていましたが、なまじ空想ではなく現実味を帯びてきた気がします。まったくのゼロになることは無くとも大幅な人員削減と組織改革、配置転換が行われるのではないでしょうか。

これは他人事ではありません。我々税理士の業界も今後大きく変わっていきそうです。この無くなる仕事リストの上位に税務申告代行者、簿記・会計・監査の事務員もランクインされています。まさに税理士の仕事が無くなると予測されています。最近のクラウド会計の普及、入力事務の省力化、海外への外注委託など着実に侵食されつつあります。今回、国税庁がAI導入を公表したことにより、一段と拍車がかかるのは明らかです。記帳入力事務や申告書作成などはいずれAIにとって代わられる時代が間近に迫っていると思います。

 

税務の世界だけが変わるわけではありません。上記の消える職業、なくなる仕事にリストアップされた702の職種について今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるか分析したところ、今後の10~20年程度で、総雇用者の約半分の仕事は自動化されるリスクが高いそうです。

日本の社会もこれから大きく変化していきます。少子高齢化による歪が本格化し、様々な問題が指摘され始めています。労働人口が減り続ける状況を考えると、IT技術、AIの開発普及は日本の未来には必要不可欠な要素とも言えます。ただ若者の人口が減り続けている限り、こうした産業への人材不足は解消されるはずもなく、世界に比べると日本の技術開発が大きく遅れる可能性も指摘されています。

 

どちらが良いのか複雑な気持ちです。自分が今まで培ってきた仕事がAIに取って代わられるのか、それとも当分生き残るのか。でも世の中は待っていてはくれないでしょう。日本が遅れれば世界に取り残されるだけです。時代の変化に対応できなければ、衰退していくだけです。国も頑張って欲しいし、若者にも奮起して明るい未来を築いて欲しいと願います。私もAIに負けてはいられませんから、税務や申告のことだけではなく、中小企業の経営者の方に少しでも役に立てるよう、新しい知識の習得と経験を積み重ねていきます。